コーヒー製造において欠かせない工程が「精選」です。
コーヒーの実、コーヒーチェリーから生豆を抽出するこのプロセスは、製品の味に大きく影響を与えるため、非常に重要です。
ここでは、精選の手法とそれがどのようにコーヒーの風味に影響するかを詳しく解説します。
精選プロセスとは何か?
精選は、収穫されたコーヒーチェリーから生豆を取り出す作業のことを指します。
この工程でどのようにコーヒー豆が形成されるか、具体的な役割とその重要性を説明します。
コーヒー製造における精選の役割
コーヒーチェリーは、赤く熟した果実から生豆を抽出してコーヒー豆が作られます。
コーヒー生豆の生成には以下の主なステップがあります。
- 栽培
- 収穫
- 精選
- 選別
収穫されたチェリーは内部に果肉と種子を含んでおり、精選はこれらの種子を取り出す工程です。
この種子から生豆を生成し、さらに長期保存や輸送が可能となります。
精選直後の生豆は不揃いですが、次の選別工程で大きさを揃えたり、使用できない豆を取り除くことが行われます。
精選方法による味の違い
精選手法は多岐にわたり、選ばれた方法によって最終的なコーヒーの味わいが変わります。
精選はコーヒーの品質と味を左右する重要な工程であるため、異なる精選方法の味の違いを理解することは、コーヒー選びの幅を広げるのに役立ちます。
コーヒーの主要な精選方法とその特徴
世界各地で異なる精選方法が用いられており、そのプロセスによってコーヒーの風味が大きく変わります。
ここでは、特に一般的な4つの精選方法について詳しく見ていきます。
非水洗式精選(ナチュラル)
非水洗式、またはナチュラル精選は、水をほとんど使わない方法です。
ブラジルやエチオピア、イエメンなどの国で好んで採用されています。
この方法は、収穫後に粗選別を行い、その後は主に天日干しやドライヤーを使用して乾燥させます。
最終的に脱穀して生豆を得ます。
このプロセスは比較的シンプルで、初期投資や運用コストが低いという利点があります。
しかし、天候に左右されやすいのが問題であり、乾燥が遅れることがあります。
また、脱穀が完了するまで未成熟の豆を取り除くことができません。
ナチュラル精選のコーヒーは、酸味が抑えられ、ナッツや果実の甘みが感じられる風味が特徴です。
水洗式精選(ウォッシュド)
水洗式精選は、コーヒーチェリーを水で洗浄し、種子を分離する方法です。
中南米、カリブ海諸国、アジア、アフリカなど幅広い地域で用いられています。
この方法では、果肉を除去後の豆(パーチメントコーヒー)の表面に付着するミューシレージという粘着質を、発酵槽での自然発酵やミューシレージリムーバーという機械を使って除去します。
水洗式精選は清潔で質の高い生豆を作ることが可能で、クリアで洗練された味わいが得られるとされます。
しかしながら、多量の水を必要とし、適切な水処理設備が必要です。
また、使用する水の管理に十分に気をつける必要があります。
パルプドナチュラル精選(ハニープロセス)
パルプドナチュラル、別名ハニープロセスは、水洗式と非水洗式の中間的な手法です。
ブラジルやコスタリカなどで主に用いられており、中米では特にハニープロセスとして知られています。
この方法では、ウォッシュドと同様に水を使って果肉を除去するものの、ミューシレージを部分的に残してパーチメントコーヒーを乾燥させます。
ミューシレージの残量によって、レッドハニーやイエローハニーといったバリエーションが生まれます。
均一な生豆が得られる上、水使用量を削減できるため、コスト削減にもつながります。
この方法で精選されたコーヒーは、穏やかな酸味と豊かな甘みが特徴です。
スマトラ式精選
インドネシアのスマトラ島で一般的なスマトラ式精選は、パルプドナチュラルと似た工程で、果肉を除去した後にミューシレージを含むパーチメントコーヒーを乾燥させます。
スマトラ式の特徴は、十分に乾燥する前に脱穀することです。
スマトラ島の高い湿度と多雨の気候がこの精選方法に影響を与えています。
マンデリンコーヒーは、この方法により生産されるアラビカ種の一つで、独特の濃い緑色の生豆として知られています。
スマトラ式で処理されたコーヒーは、独特のやさしい酸味、濃厚なコク、そして長く続く香りの余韻が楽しめます。
コーヒー精選における重要用語解説
コーヒー愛飲者がよく使用する、精選に関連する用語を詳しく説明します。
各工程や製法を理解することで、コーヒーをより深く楽しむことができます。
主要な乾燥手法には、自然の力を利用した天日乾燥や機械を使用する機械乾燥があり、これらは時に併用されることもあります。
天日乾燥(サンドライ)
天日乾燥は、レンガやコンクリート製の乾燥場、または地上約1メートルの高さに設置されたネット上で行われる伝統的な方法です。
この乾燥法は日照に大きく依存し、そのため品質にばらつきが出やすい心配点があります。
しかし、天日乾燥によるコーヒーは、自然な味わいと香りを保つことが可能です。
機械乾燥(マシンドライ)
機械乾燥は、専用の機械を用いて熱風で乾燥させる方法です。
この方法は地理的な条件や天候に左右されにくいため、一年を通して安定した品質の乾燥が可能です。
ただし、機械を設置する初期コストがかかるほか、適切な熱風の量を調節する技術が必要です。
乾燥の目的は、コーヒーチェリーの水分含量を元の60~80%から、乾燥後の生豆での10~13%まで効果的に減少させることです。
乾燥が不十分だと微生物の繁殖による品質低下の心配点あり、一方で乾燥しすぎると生豆の割れや欠けが生じやすくなります。
そのため、適切な乾燥速度を保つことが非常に重要であり、パーチメントコーヒーの水分含量を50~60%に保ちつつ、均一な品質を達成する必要があります。
脱殻プロセス
脱殻(だっかく)は、乾燥されたドライチェリーやパーチメントコーヒーから種子を取り出す工程です。
このステップで使用されるのは脱殻機と呼ばれる専用の機械で、一部の脱殻機では脱殻後に種子をさらに研磨する機能も備えています。
乾燥が適切に行われていることがこの工程の成功には不可欠で、過剰な水分が残っていると生豆が損傷しやすく、水分が不足していると生豆が割れやすくなります。
したがって、生豆に与える負荷を適切に調節することが重要です。
ハニープロセスの紹介
ハニープロセス、またはパルプドナチュラルは、はちみつのような風味を持つコーヒー豆を生産する精選方法として知られています。
このプロセスでは、果肉の一部を豆に残すことで、特有の甘みと香りが豆に移るのが特徴です。
中米ではこの粘着質の部分を「ミエル」と呼び、これが「はちみつ」を意味することから「ハニープロセス」という名前が生まれました。
この独特のフレーバープロファイルは、オリジナリティを重視する市場で特に人気があります。
まとめ
コーヒー豆が私たちの手元に届くまでには、栽培から流通に至るまで多くのステップが含まれていますが、特に精選はコーヒーの風味に大きな影響を与える重要な工程です。
一般的にはあまり知られていない精選方法の違いを学ぶことで、コーヒー豆の特性を深く理解し、新しいコーヒー体験を探求するのに役立ちます。